薬剤師がマイクロ法人を設立する際には、多くのメリットが存在しますが、同時に注意すべきデメリットもあります。この記事では、薬剤師としてマイクロ法人を設立する方法とその際の重要な注意点を詳しく解説します。
資産管理の効率化や税効率の向上など、法人設立による利点を最大限に活用するための戦略を、具体的なステップと共にご紹介します。
また、リスク管理や法的規制への対応など、マイクロ法人設立における潜在的なデメリットについても、明確に理解し対策を講じることが重要です。このガイドを通じて、薬剤師としての新たなキャリアパスを探求する一助となれば幸いです。
- マイクロ法人設立のメリット、例えば資産管理の効率化や税効率の向上について
- 法人設立時の具体的な手続きと必要なステップについて
- マイクロ法人設立に伴う潜在的なデメリットやリスク管理の方法について
- 法的規制や運営上の注意点についての理解
薬剤師が考えるべきマイクロ法人の基本的活用法
最近、よく耳にするマイクロ法人。どのような薬剤師にメリットが大きいかを検証してみました。結論から言えば以下の薬剤師にはマイクロ法人設立のメリットが大きいと考えられます。
また全ての薬剤師がマイクロ法人の設立にメリットがある訳ではありません。法人設立や運営には手間も掛かるため有益性を考慮して検討する必要があります。
- 今は勤務薬剤師であるが、将来薬局を開業したいと考えている薬剤師
- 今は勤務薬剤師であるが、将来フリーランス薬剤師として自立を考えている薬剤師
- 今は個人事業主として薬剤師
- FXなど個人口座よりも法人口座の方が優位な投資を実現したい薬剤師
マイクロ法人のメリットの一つに節税がありますが、節税の恩恵を得る為には安定した収益が必要となります。
では、マイクロ法人を設立して何をするか・・ですが、薬局と業務委託契約を締結し週に1回勤務することで報酬を得ます。現在フリーランス薬剤師のマッチングサイトを利用することで契約先の薬局を見つけることができます。
つまりマイクロ法人の安定した収益を得ることが可能となります。その他薬剤師として勤務する以外でも収益が得られることがあればそれでも成立します。
以下のそのフローを解説します。
自宅から通勤可能な薬局をマッチングサイトで探しておく。時給は3,500円以上の案件が目安。
マッチングサイトのきょうりょく薬剤師では最低時給が3,000円以上となっており3,500円以上の薬局も多数求人を掲載しています。法人設立には司法書士に依頼しても2週間ほどの時間は必要ですので、事前に契約先の候補は探しておくと良いでしょう。当然ですが、マッチングサイトを利用することなく、自力でいい契約ができる薬局があるのであればそれで十分です。
管理薬剤師は他の薬局では薬事に関わることは薬剤師法で禁止されています。また公務員薬剤師も公務員法で副業を禁止されております。
現在、勤務薬剤師をしている薬剤師は所属先の就業規則を確認しておきましょう。
法人の設立については後ほど解説します。法人設立時の注意は銀行口座の開設です。新規法人口座は開設の審査も厳しくネット銀行では拒否されることが多いです。現在個人で取引のある銀行か税理士さんからの紹介先の銀行がスムーズかもしれません。売上は当然ですが法人口座へ入金すること。特に勤務薬剤師におススメするのは役員報酬は0円で設定すること。無報酬にすることで、現在勤務する会社に副業をしていることがバレることもありませんし、代表者は収入が発生するだけで社会保険料の納付が必要となり現在の勤務先と按分する必要があり、必ずバレます。事前に話し合いができていれば問題はありませんが、注意しておく必要があります。
仮に時給3,500円を8時間、年50回勤務することで、3,500円×8時間×50日で年商140万円の法人となります。その他の副収入があれば法人の事業として請け負うことも可能です。法人設立時に定款に事業の範囲を明記する必要がありますので、法人登記は司法書士に依頼すると負担は軽減されます。
事業としてかかった費用は経費として認められます。例えば・・・
- スマホ代
- 車両代
- ガソリン交通費
- 書籍代
- ネットなど通信代
- 飲食代
- 税理士報酬
- 法人設立時の司法書士報酬
- 自宅家賃の案分
- 白衣、ハンコ代
経費を使用するも節約するのも決めるのは自分自身です。
開業したい薬剤師は開業時までこれを継続する。
フリーランス薬剤師として自信がついて勤務先を退職するまでこれを継続する。
個人事業をしながらの場合は後ほど詳しく解説します。
マイクロ法人とは?
マイクロ法人は、経営者1人で経営する法人のことを指します。家族を含めることもある為プライベートカンパニーとも呼ばれます。
事業の拡大と成長により利益の一部を配当として株主に分配する一般的な法人と異なり、株主と経営者と労働者を兼ねた法人とイメージすると分かりやすいと思います。
しかし、マイクロ法人設立には、登記費用や専門家への報酬など、初期費用として約30万円から50万円程度が必要となることが一般的です。
また、法人設立には法人名の決定、定款の策定、資本金の準備など、複数の手続きが伴います。これらのプロセスを理解し、計画的に進めることが、マイクロ法人設立の成功への鍵となります。
法人の設立の作業は一度きりですが大変です。それを上回るメリットがあるかどうかを十分に検証する必要があります。
独立思考の薬剤師が設立してこそ最大のメリットがある
マイクロ法人は、独立思考を持つ薬剤師にとって、特に大きなメリットをもたらします。
独立思考の薬剤師は、自身のビジョンに基づいて事業を展開し、新しいサービスや革新的なアプローチを取り入れることができます。マイクロ法人を通じて、薬剤師は自分の専門知識を活かし、より柔軟に事業を運営することが可能になります。
薬剤師の独立で一番多いのは薬局の開業です。独立思考の薬剤師が勤務薬剤師の状態でマイクロ法人を設立するメリットは何があるのでしょうか。
- 開業時には法人が開設者となることが多く予め設立することで、開局がスムーズになる
- 法人開設しておくことで開局時の融資など社会的な信用を増すことができる
- 法人設立時からの内部留保は、そのまま事業資金として使用できる
- 代表取締役を名乗ることができる
万が一独立開業が実現しなかったとしても決して負の遺産を背負うことはありません。会社を解散し精算時には繰越金を退職金で受け取ることは可能ですし、マイクロ法人と言えども会社経営者を経験することは貴重な経験となります。
個人事業主が設立するメリットと注意点
個人事業主がマイクロ法人を設立することには、特に節税と社会保険料の軽減という顕著なメリットがあります。
法人税率は個人所得税率よりも低く設定されているため、特に年収が高い個人事業主にとって、法人化は大きな節税効果をもたらします。
例えば、年収が1,000万円を超える個人事業主がマイクロ法人を設立すると、個人所得税率と比較して税率の差が生じることがあります。これは年間で計算するとの節税につながる可能性があります。
また個人事業主も法人も課税売上が1,000万円を超えることで、消費税の支払い義務が生じますので、事業を分散することで、消費税の免税事業者となります。
また、社会保険料の面でもメリットがあります。個人事業主は、所得に応じて高額な国民健康保険料や国民年金を支払う必要がありますが、法人化することで、これらの負担を軽減することが可能です。
法人の役員として給与を受け取ることにより、社会保険料の計算基準が変わり、個人事業主時代に比べて保険料が低減されることが一般的です。
ここで重要となるのは役員報酬の設定です。個人事業主として現在は国民健康保険や国民年金に加入しているはずですので、社会保険と厚生年金の加入に切り替わりますが、役員報酬が0円では社会保険には加入できません。
では役員報酬をどの程度で設定すれば加入できるか・・それは各都道府県の年金事務所の判断ではありますが、月額5万円の役員報酬で加入できるとされています。
令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表これは大阪府の保険料の月額表ですが、5万円の役員報酬とすると社会保険と厚生年金合算で22,000円程度隣、労使折半で個人負担は11,000円程度となります。保険料額表は各都道府県で若干異なりますので、居住地の表を参照ください。
現在個人事業主の薬剤師はマイクロ法人の設立により、経費は役員報酬のみとすると・・
140万円(売上)ー60万円(役員報酬)ー13.2万円(社会保険料)=66.8万円となります。
週一のフリーランス勤務の条件下で、その他の経費や法人住民税均等割や法人税の支払いで繰越金はほとんど生まれないかもしれませんが、一番の恩恵は健康保険と年金の負担軽減となります。
個人事業主薬剤師がマイクロ法人設立で最大の効果を発揮するのは役員報酬162万5千円以下の設定をすることで55万円の給与所得控除が受けられます。
55万円の控除と必要経費を考慮すると法人税の支払いは無しと考えられる。ただし法人住民税の均等割が7万円必要
しかし、注意点も存在します。マイクロ法人の設立と運営には、個人事業主時代には必要なかった会計や税務の知識が求められます。
また、法人設立には一定の初期費用がかかり、運営には継続的な経費が発生します。これらのコストは、節税効果や保険料の軽減を上回る場合もあるため、設立前に十分な計算と検討が必要です。
さらに、法人化することで、税務調査のリスクや法的責任が増加することも考慮する必要があります。また個人事業主とマイクロ法人では異なった事業であることが望ましいと考えられていますが、この点も含め顧問税理士の存在が重要となります。
個人事業主がマイクロ法人を設立する際には、節税や社会保険料の軽減といったメリットを享受する一方で、運営の複雑さや追加の責任を理解し、適切に対応することが重要です。
個人事業主と法人の違いの一つに決算の有無があります。個人事業主は確定申告を税理士無しでも自らの申告で可能ですが、法人となると決算は税理士は必要になると思います。税理士については後ほど記載します。
- 個人事業主がマイクロ法人を設立することで、社会保険の最低ランク金額で加入が実現可能で保険料の軽減となる。
- 法人税はほぼ0円でも法人住民税の均等割は必要
- 税理士を活用し個人事業主分と併せての節税を実現
株式会社か合同会社かどっちがいい?
株式会社 | 合同会社(LLC) | |
---|---|---|
資本金 | 1円〜 | 1円〜 |
設立費用 | 25万円〜 | 10万円〜 |
役員任期 | 最長10年 | 任期なし |
資金調達 | 容易(株式発行による資金調達が可能) | やや難しい(出資者の追加が主な方法) |
経営の透明性 | 高い(株主総会や取締役会の開催が必要) | 比較的低い(経営の柔軟性が高い) |
信頼性・社会的評価 | 高い(伝統的な企業形態として認知) | やや低い(新しい企業形態であるため) |
税務上の取り扱い | 一般的な法人税率が適用 | 一般的な法人税率が適用 |
適している事業規模 | 中規模から大規模 | 小規模から中規模 |
マイクロ法人を設立する際、株式会社と合同会社の選択は、事業の将来像と運営スタイルに大きく影響します。
株式会社は、その設立において最低資本金が必要なく、株式の発行による資金調達が可能です。これにより、事業拡大や外部投資者からの資金調達が容易になります。
一方、合同会社は設立費用が比較的低く、設立手続きも簡素化されています。特に、合同会社は運営の柔軟性が高く、少数経営者による意思決定がスムーズに行えるため、スタートアップや小規模事業に適しています。
株式会社は、企業の信頼性やブランドイメージを高める効果があり、大規模な事業や外部からの資金調達を考えている場合に適しています。
一方、合同会社は、経営の自由度が高く、事業の方向性を迅速に変更することが可能です。薬剤師がマイクロ法人を設立する際には、事業の規模や将来の展望、資金調達の必要性、運営の柔軟性などを総合的に考慮し、自身のビジョンに最も適した法人形態を選択することが重要です。
また、事業計画や市場動向に応じて、将来的に法人形態を変更することも可能ですので、柔軟な対応が求められます。
株式会社と合同会社の比較は設立時の費用が若干異なる程度ですので、将来独立開業を検討するなら株式会社で設立することをおススメしますが、節税のみの目的であれば合同会社でも同じ恩恵は得られる。
設立のステップと必要条件
マイクロ法人設立のプロセスは、複数の重要なステップを含みます。まず、法人名の決定と事業内容の明確化が必要です。ここで、独自性と事業の目的を反映した名前を選ぶことが重要です。
次に、資本金の準備が求められます。法律上の最低資本金は特に定められていませんが、信頼性や銀行融資の観点から、一般的には100万円以上の準備が推奨されますが、資産管理会社としての設立であれば50万円程度でも問題はありません。
私の会社の資本金は、A社500万(調剤薬局経営)、B社200万円(調剤薬局経営)、C社50万円(資産管理会社)全て株式会社で設立しました。資本金は1円でも設立できますが現実的ではありません。
法人登記には、登記申請書、定款、役員のリストなどの書類が必要で、登記費用が必要です。
これらのプロセスは複雑であり、特に税務や法律面での専門知識が必要です。そのため、司法書士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
専門家への報酬は、サービス内容にもよりますが、一般的には設立全体で約30万円から40万円程度が相場となっています。これらのステップを適切に進めることで、マイクロ法人設立の成功が見込まれます。
税制上のメリット
マイクロ法人を設立することによる税金の節約は、特に年収が高い薬剤師にとって大きなメリットとなります。個人事業主の場合、所得税率は年収に応じて5%から45%(別途住民税+10%)までとなりますが、法人税の場合、利益が800万円以下の小規模法人には15%の税率が適用されます。これは、高収入の薬剤師が個人事業主として活動する場合に比べ、大幅な税金の節約につながります。
例えば、年収1,000万円の薬剤師が個人事業主として活動する場合、所得税と住民税を合わせると約40%近くの税率が適用されることがあります。これに対し、マイクロ法人を設立し、同じ利益を法人で得た場合、法人税と住民税を合わせても約23%程度に抑えることが可能です。この差は年間で数百万円の節税につながる可能性があります。
さらに、マイクロ法人では経費として認められる項目が個人事業主よりも広範にわたります。例えば、車両費や交際費など、事業に必要な費用は法人経費として計上でき、利益を抑えることでさらなる税金の節約が見込めます。ただし、これらの節税効果を最大限に活かすためには、適切な会計処理と税務知識が必要です。そのため、税理士などの専門家と連携し、適切な税務計画を立てることが重要です。
マイクロ法人のデメリット
マイクロ法人設立のデメリットを理解することは、薬剤師が事業を展開する上で重要です。初期の設立費用は、合同会社でも最低10万円は必要です。司法書士に依頼することで報酬と合わせると総額20万円弱程度の費用が必要となります。
法人の場合、決算時に決算を行いますが、利益に応じて法人税が課されますが、注意しなければいけないのが法人住民税の均等割です。これは黒字でも赤字でも課せられる税金で、赤字決算でも7万円程度課税されるので大きなデメリットであると言えます。
また、法人運営には会計や税務の専門知識が必要で、これを自分で行うのは時間と労力の両面で大きな負担となります。多くの薬剤師は、これらの業務を税理士に委託することになりますが、その報酬も無視できないコストです。税理士への報酬は業務の複雑さによって異なりますが、後ほど解説します。
さらに、法人としての運営は個人事業主と比較して規制が多く、法的な責任も増大します。例えば、法人税の申告や社会保険の手続き、労働法に関する規制など、遵守すべき法律や規則が多岐にわたります。これらの規制に違反すると、罰金や法的な責任を問われるリスクがあります。
また、法人は個人事業主としての活動よりも透明性が求められます。これにより、薬剤師としての個人的な収入や資産状況が外部に露見する可能性があります。
これらのデメリットを踏まえ、マイクロ法人設立を検討する際には、専門家の意見を聞きながら、自身の事業計画と照らし合わせて慎重に判断することが重要です。
法人の主なデメリットは①設立費用とその手続き②決算には税理士が必須③社会保険の手続き
設立時の経費
マイクロ法人設立時にかかる経費は、具体的には以下のようなものがあります。まず、法人登記に必要な登記費用は、一般的には約15万円から20万円程度が相場です。これに加えて、専門家への報酬として、税理士や弁護士、司法書士への支払いが必要になります。これらの報酬は、業務の内容や専門家の経験によって異なりますが、一般的には数十万円の範囲内で変動します。
法人の設立月日を1日付を避けることで初年度だけですが、法人住民税の均等割を1/12軽減することが出来ます。設立日を1日付に拘らないのであれば、わずかではありますが節税となります。
節約方法としては、まず、自分でできる手続きは自分で行うことが挙げられます。例えば、事業計画書の作成や一部の書類作成は、専門的な知識がなくても可能です。ただし、法的な知識が必要な登記手続きなどは、専門家に依頼することが望ましいです。
また、複数の専門家から見積もりを取ることも有効な節約策です。税理士や司法書士などの報酬は、その専門家によって大きく異なることがあります。複数の見積もりを比較することで、最もコストパフォーマンスの高いサービスを選択することが可能です。
さらに、マイクロ法人設立に関連するセミナーやワークショップに参加することも、コスト削減につながります。これらのイベントでは、法人設立の基礎知識や節税のポイントなどが学べるため、無駄なコストを避けるための知識を得ることができます。
最後に、設立後の経費削減にも目を向けることが重要です。例えば、オフィスの賃貸料を抑えるために共同オフィスを利用する、必要最小限の備品で事業を開始するなど、運営コストを抑える工夫が求められます。
これらの方法を活用することで、マイクロ法人設立時の経費を効果的に節約し、事業の健全なスタートを切ることが可能になります。
節税対策
マイクロ法人は、特に年収が高い薬剤師にとって、節税対策として非常に有効です。個人事業主の場合、所得税率は年収に応じて5%から45%までの累進課税が適用されますが、法人税の場合、利益が800万円以下であれば税率は15%、それ以上でも最大で23.2%(2022年1月時点)となります。これは、年収が高い薬剤師が個人事業主として活動する場合に比べ、大幅な税金の節約が可能であることを意味します。
また、法人経費として認められる範囲が広いことも大きなメリットです。例えば、車両費、通信費、接待交際費など、個人事業主の場合には限定的な経費も、法人ではより広範に経費計上が認めらレることが多いです。これにより、実質的な所得を減らすことができ、節税効果が高まります。
さらに、マイクロ法人は、従業員福利厚生費用としての経費も計上できます。たとえば、従業員の健康保険料や福利厚生費用、研修費用なども経費として認められるため、これらを活用することでさらなる節税が可能です。また、法人が保有する不動産の減価償却費や修繕費も経費計上が可能です。
しかし、これらの節税対策を適切に行うためには、税務の専門知識が必要です。特に、法人税法や所得税法の複雑な規定を理解し、適切な経費計上を行うことが重要です。そのため、税理士などの専門家と連携し、適切な節税対策を行うことが推奨されます。
個人との大きな違いは必要経費が使えること。ただし業務として使用したものに限りますが、経費の範囲についても税理士のアドバイスを受けることをおススメします。
税理士の必要性
マイクロ法人を設立した後、税理士との緊密な協力は、法人運営の成功に不可欠な要素です。税理士は、法人税や消費税の申告、経理処理、さらには給与計算や社会保険手続きなど、幅広い業務をサポートしてくれます。
特に、法人税の申告においては、税理士は適切な経費計上や税務戦略を提案し、法人の税負担を最適化する役割を果たします。
税理士はまた、税務調査への対応や税務計画の立案においても重要な役割を担います。税務調査に際しては、税理士が法人の代表として税務署との交渉を行い、必要な書類の準備や説明を行います。
これにより、税務調査がスムーズに進行し、法人に不利益が生じるリスクを最小限に抑えることができます。
税理士の選定に際しては、その専門性や経験、料金体系を慎重に検討することが重要です。例えば、薬剤師が運営するマイクロ法人の場合、医療業界に精通した税理士を選ぶことが望ましいでしょう。
また、料金に関しては、一般的に税理士の報酬はマイクロ法人の規模であれば月額数万円程度の顧問料もしくは決算のみの依頼を受けてもらえるのであれば更に節約できる可能性はありますが、提供されるサービスの内容や法人の規模によって異なります。
身近に税理士がいなければ税理士ドットコムで探すと希望の税理士さんが見つかるかもしれません。
税理士との協力は、単に税務処理を代行するだけでなく、法人の経営戦略においても重要なアドバイスを提供します。税理士は、法人の財務状況を分析し、経営の効率化や収益性の向上につながる提案を行うことができます。このように、税理士との協力は、マイクロ法人の安定した運営と成長を支える重要な要素となります。
マイクロ法人と言えども税理士は欠かせません。節約したいのであれば決算以外の自分でできる範囲を自ら行うなど交渉して報酬を決めることをおススメします。税理士は設立時から相談に乗ってくれますので、良きパートナーとなります。
薬剤師がマイクロ法人の設立前に考慮しておくこと
資産管理
薬剤師がマイクロ法人を設立することにより、資産管理の効率化と税効率の向上が期待できます。具体的には、法人名義での不動産投資や株式投資など、多様な資産運用が可能になります。
たとえば、不動産投資の場合、法人名義で物件を購入し、賃貸収入を得ることができます。この場合、個人名義での投資と比較して、法人税の低い税率が適用されるため、税負担を軽減できる可能性があります。
また、株式や投資信託などの金融商品への投資も、法人名義で行うことで税効率が良くなります。
例えば、法人名義で株式を購入し、配当金を得る場合、配当所得に対する税率が個人の場合よりも低くなることが一般的です。これにより、長期的な資産形成において有利な条件を得ることができます。
個人での投資との違いは賃貸収入や配当金を役員報酬として受け取れること。これは家族が役員であっても可能であり、所得の分散をすることが可能となります。
ただし、これらの投資活動にはリスクが伴います。市場の変動や投資対象の価値の変動など、様々な要因により資産価値が減少する可能性があります。そのため、投資計画の立案や実行にあたっては、資産運用の専門家と十分に相談し、リスク管理を徹底することが重要です。
さらに、資産管理の一環として、法人の資金運用計画を定期的に見直し、適切なキャッシュフロー管理を行うことも大切です。例えば、不動産投資による賃貸収入や株式投資による配当金の流れを把握し、それに基づいて運用計画を調整することで、より効果的な資産管理が可能になります。
このように、薬剤師がマイクロ法人を通じて資産管理を行う場合、税効率の良さと多様な投資選択肢を活用することで、資産の増加とリスクの管理を両立させることが可能です。ただし、専門家との連携と慎重な計画立案が成功の鍵となります。
資産運用のポイント
マイクロ法人を通じた資産運用は、薬剤師にとって多様な投資機会を提供します。
例えば、法人名義での不動産投資は一つの魅力的な選択肢です。法人が不動産を購入し、賃貸収入を得ることで、安定した収益源を確保できます。現在の市場では、中心地のオフィスビルや郊外の住宅など、年間利回り5%前後の物件が見つかることもあります。
また、余剰資金を株式や投資信託に投資することも一つの手段です。株式市場の利回りを得ることはできますが、市場の変動によるリスクも伴います。そのため、投資は分散させることが重要で、例えば株式と債券のバランスを取りながらポートフォリオを構築することが推奨されます。
ちなみに私は米国インデックスの積立と米国債券に分散しています。株式投資はリスクが高いので債権投資の比率を高めています。
重要なのは、これらの投資活動が法人の主たる事業活動として適切に管理されることです。不動産投資の場合、物件の選定から管理、賃貸契約の締結まで、専門的な知識が求められます。また、株式や投資信託の選定には、市場動向の分析やリスク管理が不可欠です。
これらの活動を効果的に行うためには、資産運用の専門家や不動産のプロフェッショナルとの連携が欠かせません。専門家と協力して、リスクを抑えつつ長期的な資産形成を目指すことが、マイクロ法人を通じた資産運用の成功の鍵となります。
若手薬剤師が設立するメリット
若手薬剤師にとって、マイクロ法人の設立は、キャリアと財務の両面で大きなメリットをもたらします。以下は、若手薬剤師がマイクロ法人を設立する際の主な利点です。
- 将来独立して薬局経営を考えているのであれば、マイクロ法人での利益の繰越金や投資収益金を薬局開設時の資金に充当でき、金融機関からの融資額を抑えることができる。
- 仮に独立開業の縁が無かったとしてもマイクロ法人は資産運用会社として活用でき、若い人ほど長期の運用が可能となり複利の運用が可能となる。早期から資産形成を開始でき長期的な収益源を確立することが可能です。若いうちからの投資は、複利の効果を最大限に活用することを意味し、30年間で資産を数倍に増やす可能性があります。
- マイクロ法人で週一勤務からスタートして自信がついた頃に本格的にフリーランス薬剤師として週5から週6勤務の契約をすることで、自立した薬剤師になることも可能。
- マイクロ法人を解散するときは繰越金は退職金として受け取ることが可能となり、退職金控除を活用することで、非課税枠での恩恵を受けることができる。
- キャリアの多様化と拡張も可能となり、マイクロ法人を通じて、若手薬剤師は従来の薬局業務に加え、コンサルティング、健康管理サービス、オンライン医薬品販売など、新たなビジネス領域に進出することが可能になります。これにより、キャリアの選択肢が広がり、収入源の多様化が図れます。
- 経営スキルの早期に習得することができ、若手のうちから法人経営の経験を積むことで、ビジネス管理、財務計画、人材管理などの重要なスキルを身につけることができます。これらのスキルは、将来のキャリア発展において大きなアドバンテージとなります。
- 将来のビジネスチャンスの拡大が可能となり、若手のうちに法人を設立し、経営経験を積むことで、将来的なビジネスチャンスを広げることができます。例えば、業界内でのネットワーキングやパートナーシップの構築、新たな市場への進出などが可能になります。
これらのメリットを最大限に活用するためには、若手薬剤師は経営に関する知識を積極的に学び、専門家のアドバイスを受けながら、戦略的なビジネス計画を立てることが重要です。
法人経営者という立場が人を成長させることも期待できます。また必ずしも投資をする必要も無く、現金として開業まで資金を繰り越して貯めることも選択の一つです。
資産運用とリスク管理
マイクロ法人を利用した資産運用は、効果的なリスク管理戦略を伴う必要があります。以下は、マイクロ法人における資産運用とリスク管理の具体的なアプローチです。
- 分散投資の実施: 資産運用の基本原則として、分散投資はリスクを軽減する重要な手段です。例えば、株式、債券、不動産、金融商品など、異なる資産クラスに投資することで、市場の変動に対するリスクを分散させることができます。実際には、株式への投資比率を40%、債券20%、不動産30%、その他10%とするなど、資産クラスごとに明確な割合を設定することが推奨されます。
- リスク許容度の明確化: 法人の投資戦略を策定する際には、リスク許容度を明確に設定することが重要です。例えば、短期的な市場の変動に対してどの程度の損失を許容できるか、また長期的な投資目標に対してどの程度のリスクを取るかを決定します。これにより、市場の変動に対する過度な反応を避け、長期的な視点での資産運用が可能になります。
- 市場動向の定期的な分析: 資産運用においては、市場の動向を定期的に分析し、必要に応じて投資ポートフォリオを調整することが重要です。例えば、経済の景気循環や金融政策の変更など、市場に影響を与える要因を常に監視し、運用戦略を柔軟に調整します。
- 専門家との連携: 資産運用におけるリスク管理は複雑で専門的な知識を要するため、金融アドバイザーや投資顧問との連携が推奨されます。これらの専門家は、市場の最新動向や税制面のアドバイスを提供し、運用戦略の最適化をサポートします。
- 緊急時の資金確保: 予期せぬ市場の変動や経済危機に対処するためには、緊急時の資金確保が重要です。例えば、運用資金の一部を現金や現金同等物に保持することで、短期的な市場の変動に対応しやすくなります。
これらの戦略を通じて、マイクロ法人は資産運用におけるリスクを効果的に管理し、長期的な資産増加を目指すことができます。
設立する際の注意点
薬剤師がマイクロ法人を設立する際には、以下のような具体的かつ専門的な注意点を考慮する必要があります。
- 設立費用の見積もりと準備: 法人設立には、登記費用、必要であれば司法書士への報酬や印鑑代など初期費用が発生します。具体的には、設立にかかる費用は最低50万円を見積もると良いでしょう。これは主に法人の登記費用であり、すぐに業務委託先の仕事から収益が発生することを前提としています。
- 会計・税務知識の習得または専門家の選定: 法人運営には、会計や税務に関する知識が不可欠です。薬剤師がこれらの知識を持っていない場合、信頼できる税理士を選定することが重要です。専門家の選定には、その経験、専門性、報酬額などを慎重に検討する必要があります。
- 事業計画の策定: 法人設立後の事業計画は、事業の方向性や目標を明確にするために重要です。計画には、事業内容、市場分析、販売戦略、収益予測などを詳細に記載します。例えば、薬局の新規開業の目処が付けば、年間売上目標を設定し、それを達成するための具体的な戦略を策定することが求められます。
- 資産運用計画の検討: 法人設立後の資産運用計画も重要な要素です。資産運用には、不動産投資、株式投資、債券投資などがありますが、それぞれの投資にはリスクとリターンが伴います。例えば、不動産投資を行う場合、物件の選定、購入後の管理、賃貸収入の見込みなどを詳細に計画する必要があります。
- 法的規制と業界基準の理解: 法人経営となれば各種法令を理解する必要があります。売上が発生すれば税法、人を雇用すれば労働基準法等理解は不可欠ですが、対応に困ったときは各種専門家への相談が解決の糸口となります。
これらの注意点を踏まえ、薬剤師はマイクロ法人設立の際に適切な準備と計画を行うことが、成功への鍵となります。
廃業するする時のことも考慮
マイクロ法人の設立時には、将来的な廃業のシナリオも考慮することが重要です。廃業プロセスは、単に事業を停止する以上の複雑な手続きを伴います。
具体的には、法人の解散登記、税務処理、資産の処分などが含まれます。解散登記には、登記所での手続きが必要で、これには数週間から数ヶ月を要することがあります。
税務処理に関しては、特に注意が必要で、未処理の税金がある場合、廃業後も税務上の問題が生じる可能性があります。このため、廃業に際しては、税理士などの専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
また、従業員がいる場合、彼らの退職手続きや退職金の支払いも重要な課題です。退職金の支払いには、法人の財務状況に応じて数百万円の資金が必要になることもあります。
廃業をスムーズに進めるためには、事業開始時から廃業時の計画を立て、必要な資金を確保しておくことが望ましいです。廃業計画には、資産の処分計画や従業員への通知計画など、事業の規模や性質に応じた詳細な計画が必要です。
これにより、廃業時のリスクを最小限に抑え、関係者への影響を軽減することができます。
マイクロ法人設立時は、解散する時のことまで考えて設立することが重要です。
薬剤師社長がマイクロ法人を設立した理由と経過
私がマイクロ法人を設立した当時はマイクロ法人という言葉は無かったと思います。2006年の会社法改正により株式会社の設立要件が大きく変更になり、取締役は1名、資本金は1円から設立可能となりました。
それ以前は取締役4名以上で資本金1,000万円以上でしたので、大きく緩和されたのです。それにより株式会社の設立が容易となった背景があります。
私が法人設立を決心したのは、以前より運営していた共同経営ではなく、自分自身だけの薬局経営をするためでした。門前薬局の開設には医師への営業が不可欠であり、個人名の名刺より既存の法人の方が安心感を得られるとの考えと、自己へのプレッシャーを与えるために事前に株式会社を設立しました。
- 資本金200万円の株式会社、本店所在地:自宅
- 代表取締役1名取締役1名(妻:薬剤師)、役員任期:10年
- 役員報酬0円、
- 法人登記:司法書士へ依頼(定款作成から申請まで込みで35万円)
- 顧問税理士(月額3万円で設立時から全て経営相談込み)
営業の甲斐あって、設立の半年後に新規開業希望の医師を紹介いただくこととなり、設立の1年半後に新規調剤薬局の開設に至りました。
- 知人の新規開業薬局のオープン時の調剤(業務委託契約)
- 知人の薬局での週一勤務(業務委託契約)
- 新規開業希望の医師の情報収集→面会→打ち合わせ→薬局開設準備
- 国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)や銀行への融資相談
結果的に先に法人設立をしておいたことで、薬局開設準備に集中することができたことや、業務委託で収益も得たことで、その後の会社運営には全てプラスでした。
仮に新規開業案件の機会に恵まれなかったとしても、この法人で業務委託契約の売上はいくらでも増やすことはできたので、後に資産運用会社として活用することも可能でした。私の場合はこの法人とは別に資本金50万円の正真正銘の資産運用会社を別途設立し現在に至ります。
まとめ
- 薬剤師がマイクロ法人を設立することで資産管理の効率化と税効率の向上が期待できる
- 法人名義での不動産投資や株式投資により多様な資産運用が可能
- 法人税の低い税率適用による個人投資との税負担軽減
- 配当所得に対する税率が個人より低く、長期的な資産形成に有利
- 賃貸収入や配当金を役員報酬として受け取ることで所得分散が可能
- 投資活動に伴うリスク管理と専門家との相談が重要
- 定期的な資金運用計画の見直しとキャッシュフロー管理が大切
- 若手薬剤師にとってマイクロ法人設立はキャリアと財務の両面でメリット大
- 薬局開設時の資金充当や長期的な収益源確立に役立つ
- マイクロ法人を通じて経営スキルの習得とキャリアの多様化が可能
- 資産運用には分散投資とリスク許容度の明確化が必要
- マイクロ法人設立時には法的規制と業界基準の理解が必須